高千穂では昔から釜炒り茶を作ってきました。直火で熱した釜に生葉を入れて炒って、香ばしい香りを作り出します。皆さんがよく飲まれている、蒸して作る煎茶に比べ、さわやかな香りと風味が特徴です。また淹れたお茶の色は透き通った黄金色になります。
釜炒りの製法は15世紀頃、中国から伝わったと言われています。煎茶が普及する前の緑茶はすべて釜炒り製法でした。ですから釜炒り茶はお茶の原点と言えると思います。
昔ながらの製法で良質な釜炒り茶を作る生産者は、高千穂のほか日之影や五ヶ瀬など、西臼杵郡には多く残っています。
鉄釜で炒ったあとは、揉みながらしっかり乾燥させていきます。この過程で、釜炒り茶の特徴と言われる丸みを帯びた勾玉(まがたま)状の形状になります。
完成した釜炒り茶は蒸して作ったお茶に比べ、茶葉の色は少しくすんでいるように見えますが、淹れたお茶は透明感のある黄金色になります。香りはとても豊かで、さっぱりとした味わいです。
特徴的な香りを存分に楽しむために、急須で淹れて飲むことをおすすめします。1煎目、2煎目と変わる味の違いを味わうこともできます。
摘んできた新鮮な生葉は、直火で熱くなった鉄製の釜に入れ殺青を行います。釜の温度は約300℃。茶葉の様子を見ながら炒る時間はだいたい2~3分ほどです。この最初に行われる作業こそ、釜炒り茶特有の香りを生み出す重要な工程です。
鼻に届く香りや手の感触、それに色や温度など、五感で覚えた感覚が頼りです。高千穂釜炒り茶のいちばんの特徴である香りと味を引き出すことをいつも大切に考えながら、お茶と向き合っています。