昔から、1日の寒暖差が大きくて霧の発生する地域はおいしいお茶の産地と言われてきました。寒暖の差によって新芽がゆっくり、じっくり育つことで、土の中の栄養をしっかりと取り込んで、香りと旨味が沢山詰まった茶葉に育つこと、また霧は霜の被害を防ぎ直射日光が当たり過ぎるのを防いでくれることなどが、その理由です。
宮崎県北西部の山間部、標高350メートルほどに位置する高千穂地方は昼夜、さらに年間を通して寒暖の差が大きい所です。またよく霧が立つことから、良質な茶葉の一大産地となりました。
さらに、より安心安全でおいしいお茶をお届けしていこうと、私たちは有機栽培に取り組んでいます。
釜炒り茶は、生葉を釜で炒って加工した緑茶です。
緑茶の製法には、摘んできた生葉を蒸して作る蒸し製と、釜で炒って作る釜炒り製の2種類ありますが、日本茶の9割以上は煎茶や玉露、抹茶などの蒸し製です。釜炒り製のお茶は宮崎をはじめ九州の一部地域で作られています。
高千穂では昔から釜炒りでお茶を作ってきました。この昔ながらの釜炒り製は今も高千穂では一般的な製法です。産地が限られ緑茶生産の1%にも満たないため貴重なお茶と思われがちですが、釜炒り茶は私たちの生活には欠かせない日常茶。宮崎県は全国一位の産地です。
この高千穂で農業を営んできた甲斐家の、私は4代目となる甲斐雅也です。祖父がお茶の栽培をはじめてから70年ほどになります。私と両親と従業員さん1名で、釜炒り茶のほかウーロン茶や紅茶を作っています。茶摘みの最盛期にはパートさんの力も借りますが、皆さん家族と同じ。信頼してお茶づくりに集中できる環境です。
私たちが作ったお茶が全国の品評会で1位に選ばれたことは大きな励みです。さらなる味の追求に挑戦しながら、地元の人がおいしいと言ってくれるお茶を作り続けていきます。
高千穂でも農家の高齢化が進み、作り手のいなくなった畑も増えています。それをできる限り担って、高千穂釜炒り茶の生産量を確保していきたいと思っています。